研究概要 |
本研究の目的は、陽極酸化法という電気化学的手法を用い、ナノスケールの細孔が規則正しく配列した酸化アルミニウム薄膜(ポーラスアルミナ薄膜)を作製し、その細孔を利用して酸化亜鉛(ZnO)のナノドットやナノワイヤーを作製すると共に、その結晶構造や光学特性を明らかにすることである。 本年度は、基になるポーラスアルミナ薄膜について、陽極酸化の際の電解液の種類や印加電圧,陽極酸化時間,液温などを変えて作製し、形成された孔の大きさや間隔、孔の分布の規則性を電子顕微鏡で観察し、作製条件と形成組織間の関連性を確立した。また、リン酸で表面エッチングしたポーラスアルミナ薄膜を用いて、電気化学的手法により、細孔内にZnOを析出充填させ、ZnOナノワイヤーの作製を試みた。その様にして作製したZnOナノワイヤーの発光特性を低温で測定したところ、ポーラスアルミナによる発光バンドに加え、ZnOの酸素欠陥に起因したと思われるブロードな発光バンドが観測された。さらに、その試料に対し、250度で熱処理を行った後、再び発光特性を測定測定すると、ZnOのバンド端付近(3.4eV)にブロードな弱い発光バンドが現れた。この結果から、電気化学的手法で作製したZnOに適当な熱処理を行うことにより、ZnOの結晶性が改善することが分かった。 今後の課題としては、ZnOを析出充填させる際の条件の絞り込みと熱処理条件の確立があげられる。また、詳細な発光特性の測定なども次年度に取り組む課題である。
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