研究概要 |
本研究は、「非連結フェルミ面と幾何学的格子設計による超伝導体探索」を目的に掲げ、非連結フェルミ面の形成による高温超伝導の発現が期待されるダイマーモデルに着目し、新奇超伝導体の探索を行ってきた。具体的な方針として、ダイマーモデル、プラケットモデルの適用可能な物質の候補として、特異な結晶構造を有するという観点からBaS_2,Bi_2CuO_4,Cu_2Te等を取りあげ、研究を行った。 (1)BaS_2は、その結晶構造のみがこれまで明らかであったが、純良試料による物性測定から、本物質が絶縁体的な電気伝導を示すことを明らかにした。そこで、Baサイトへの他元素置換によるS-Sダイマー内、ダイマー間のトランスファー制御やキャリア(ホール)ドープを試みたが、合成には至らなかった。 (2)Bi_2CuO_4は、T=42Kで反強磁性転移を示すことが過去の報告から明らかになっており、Biサイトへの他元素置換による反強磁性の抑制、CuO_4正方格子内のトランスファー制御を試みた。しかしながら、他元素置換による反強磁性転移の抑制等の物性の変化は観測されなかった。 (3)Cu_2Teは、BaS_2と同様にその物性が明らかになってはいなかったが、純良試料による物性測定から、本物質が金属的な電気伝導を示すことを明らかにした。さらに、トランスファー制御を目的として、SをTeサイトに50%まで置換することに成功し、置換量の増加に伴って、金属から半導体的な電気伝導へと変化することが明らかになった。S置換による格子収縮によって、Cu-Cuダイマー内のトランスファーが増大することが期待されたが、この結果より、本物質の電気伝導は、Teのp軌道の寄与が大きいことが示唆される。
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