研究課題
本研究は3次元孤立渦の定常運動として渦ソリトンを取り上げ、それにより誘起される粒子運動を数値計算により求め、渦ソリトンによる流体輸送を議論することを主なる研究目的としている。初年度までに得られた渦ソリトンによる流体粒子の輸送問題を発展させ、本年度は渦輪による流体輸送の問題に取り組んだ。渦輪は閉じた渦糸がつくる安定な孤立渦であり、それによる流体輸送は実用的にも非常に重要な問題である。最初に簡単な場合として渦輪が平面内で円形になる場合を基準にし議論を進めた。この軸対称の渦輪は一定の速度で並進運動をし、渦の強さに応じた一定体積の流体を輸送する事が知られている。渦輪の形が円形からずれると渦輪は時間的に非定常な運動を始める。円からの変形として楕円渦輪の運動を考察した。まず、楕円の長短軸比が小さく、円からの変形がそれほど大きくない場合には楕円渦の運動は局所誘導方程式(Local Induction Equation)によって近似できる事を確認した。続いて楕円渦輪の運動に伴う流体粒子の運動を記述する力学系を楕円渦に沿ってのBiot-Savart積分を行うことにより構成し、数値計算によって多数の粒子の軌跡を求めた。楕円渦の非定常運動により、粒子は複雑な3次元運動を行うが、有限領域内の粒子は楕円渦の近傍に留まり、楕円渦と共に運動すること、すなわち有限体積の流体が楕円渦によって輸送されることが示された。この結果は6月にトリエステ(イタリア)のThe Abdus Salam International Center for Theoretical Physicsで開かれたConference on Vortex Rings and Filaments in Classical and Quantum Systemsにおいて発表された。
すべて その他
すべて 雑誌論文 (1件)
in Proceedings of the IUTAM Symposium on Elementary Vortices and Coherent Structures : Significance in Turbulence Dynamics, (S.Kida, ed., Kluwer) (in press)