研究概要 |
通常の球面変換ではまず球面上の関数f(θ,φ)を経度方向について三角関数を用いてフーリエ展開し.ついで緯度のみに依存する変換後の関数をルジャンドル関数により変換して球面上のスペクトルを得る。この研究では,ルジャンドル関数Pml(cosθ)の代わりに区間[0,π]で正規直交系をなす関数 Uml(θ)=【square root】 sin θ Nml Pml(cosθ) を用いてルジャンドル変換を高速化することを試みた.この関数は定義域にl-m+1個の極値(最大,最小)を持ち,幾分sin(l-m+1)θと似た変化をするのでFFTの適用ができそうである。しかし,(a)振動周期が両端に近づくにつれて長くなる,(b)振幅も両端に向かって大きくなる,(c)両端近くにほぼ一様にゼロの領域がある,の3点で三角関数と大きく異なる.このため,そのままでFFTを施しても次数によってうまく分離することはできない.そこで横軸をスケールし直した座標での関数値に対してFFTを適用することFFTスペクトルをある臨界波数以上と以下に二分できることが示された.しかしこの分離は完全でなく臨界波数付近では成分の漏れがある。このためこの漏れを十分小さくできるようさまざまな座標変換を試みた。 その結果はあまり芳しくない。つまり、異なるmに対し最適な座標変換が異なることが判明した。ということは、ある緯度の関数を表現するための最適な格子点配置はmが変わると変化するということで、すべてのmにたいして変換を実施するときには外挿または内挿が必要になるということである。この結果はルジャンドル変換を高速で実施するという目的には反することになる。 この研究結果について、海外共同研究者のロバーツ教授に数学的理論(直交関数論)の面から検討してもらったが、やはり結論としてはこのやり方で変換を高速化することは困難であるというものであった。
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