研究概要 |
本年度は、まず、種々の音波の発生源とその特性を調べ、パラメータ化/モデル化の作業を行った。超高層大気中で観測される音波の発生源としては、オーロラ、対流圏の擾乱現象、地震、火山、隕石などの落下、人工的な爆発、などいろいろなものが考えられている。このうち、(1)オーロラによる加熱、(2)対流圏の雷などの突発的現象、(3)地震や津波に伴う振動、などに伴う音波の発生と伝播特性の研究を行った。この研究においては、国内および外国旅費を使用して、他分野の研究者から情報を収集した。これと平行して、音波解析用数値シミュレーションモデルの構築を開始した。このモデルは、研究代表者が独自に開発した非静力学平衡圧縮性大気モデルを基本としている。モデル開発のための計算は、名古屋大学情報連携基盤センターのスーパーコンピュータVPP5000/56、および、本研究費で購入した高性能のPCを用いて行った。 一方、偶然ではあるが、2004年12月26日にスマトラ沖地震が発生し、本研究に関して非常に重要なデータが提供された。この地震では、発生から約12分後に、約1450km離れたタイ中央部のPhimai(15.2N,102.6E)で、周期が約3.8分の地磁気脈動が観測された。初期の解析結果から、この現象は、地震に伴う海面の上下運動が音波モードの波を発生させて熱圏下部高度に到達・反射し、熱圏下部と海面との間に形成される音波ダクトで共鳴した結果、電離層が上下運動して生じたダイナモ電流の振動が原因であると推測される。現在、この現象が本当に音波モードの波によって説明できるかどうか、本研究で開発したモデルを用いた数値シミュレーションを行って定量的な検証を行っている。
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