研究課題
平成17年度は、以下の2つの研究を行った。(1)オーロラ活動に伴う音波の発生と伝搬極域の熱圏では、オーロラ活動に伴って局所的に極めて激しい運動や複雑な温度構造が生成されることが分かっているが、オーロラ活動に伴う局所的なダイナミクスと背景風との相互作用が、観測されている熱圏の複雑な運動や温度構造の一つの原因となっていると考えられる。我々はオーロラ活動に伴う熱圏変動を詳細に調べるために、高精度の非静力学平衡熱圏・電離圏モデルを開発し、シミュレーションを行った。その結果、背景風と大気加熱の相互作用によって、加熱領域の下流側に上下方向の鉛直風の振動が励起されることがわかった。(2)地震、津波に伴う音波の発生と伝搬下層大気の擾乱によって音波が発生し、超高層大気まで伝搬していくことは、1970年代から示唆されてきた。しかし、具体的に地表付近のどの現象がどの電離圏変動に対応しているかは明らかでなかった。こうした中、2004年12月26日のスマトラ沖地震では、発生から約12分後に、約1450km離れたタイで周期が約3.6分の地磁気脈動が観測された。その原因として、地震に伴う海面の上下運動が音波モードの波として電離層高度に到達、熱圏で反射され、中層大気あるいは海面との間に形成される音波ダクトで共鳴し、電離層高度の大気を上下運動させてダイナモ電流の振動が起こった可能性が考えられた。一方、GPSの電離圏総電子量(TEC)観測でも津波起源の大気波動によると思われる電離圏波動が見つかった。我々は、音波モードの波を定量的に取り扱える非静力学大気圏・電離圏結合モデルを用いて、熱圏・電離圏の変動を調べた。その結果、熱圏において周期約4分の音波モードの波動と、周期数10分、伝搬速度数100m/sの電離圏伝搬性擾乱が再現された。これらの結果は、タイで観測された地磁気の振動が津波によって発生した音波によって引き起こされた可能性を強く示している。
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