研究概要 |
本年度は,有孔虫の殻に閉じ込められた微量な有機物をいかにして効果的に抽出し,その上で二酸化炭素ガスに変換し,ガラスチューブ内に封入するかを検討し,新たな機器の設計と設置に力を注いだ. 研究協力者の大場忠道(北海道大学名誉教授)が国際海洋学会に参加し,微小な石灰質ナノ化石の研究で著名なイタリアのErba博士と議論を行った.長谷川は,そこで得られた情報を取り入れて有機物を封入するためのガラスラインを設計し,金沢大学自然科学研究科に設置した.ガラスラインではガス圧測定に基づいて有機物含有量の測定が可能なように工夫した.これにより元素分析を行わなくても炭素含有量を把握できるようになり,コスト,時間,労力を軽減することができた.また,研究協力者として分析を補助する者の安全を考え,効果的な安全弁を追加するなどの工夫を加えた.移動や狭小なスペースでの作業も考え,分解が容易な設計とした.資金面から排気装置は分子ターボポンプを設置することはできなかったが,代替装置として自動油拡散ポンプを設置した.排気時間では分子ターボポンプに劣るものの,目的を達することには問題がないと考えられる.このことについては現在予備試料を用いて確認中である. 利用する試料について,長谷川,入野,大場で議論を重ね,前出のErba博士とも議論を重ね,日本海の海底コアに見られる,単一浮遊性有孔虫極が卓越する試料を用いることが最も効率がよいとの結論を得た.現在は予察的に別の試料を扱い,新たに設置したガラスラインのコンディショニングを行っているが,近日中に日本海の試料の分析に着手する.
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