研究概要 |
隕石母天体表面に衝突する彗星内部での水質変成モデルを検証するため,本年度は,氷・岩石混合物中を伝播する衝撃波の圧力減衰率を実験的に調べた.実験に用いた試料は岩石含有率12.5wt%の氷・岩石混合物である.この試料は,500μm以下に砕いた氷粒子と蛇紋岩粉末を混合して作成した.なお液浸法により求めたこの混合試料の密度は1.02g/cm^3である.混合試料の弾性的性質を調べるために,パルス透過法により音速計測を行なった.その結果,縦波の音速は3.75km/sとなり,氷の3.89km/sより低いことがわかった.混合試料の密度とこの音速から弾性率を計算すると14.3GPaとなる.この値は氷の1.6GPaより大きい。混合試料では岩石混合の効果により,弾性的に堅くなる傾向が見られるが,密度も大きくなるため結果的に音速は小さくなることがわかった. 衝撃圧力の計測は2段式軽ガス加速装置とピエゾ抵抗変化型の圧力ゲージを用いて行なった.実験は-10℃に冷却した低温室で行なった.衝突速度3.8km/sで2mmのナイロン玉を混合試料に衝突させ,厚さ7.5mmと18mmの試料板を通過した後の圧力をゲージで計測した.7.5mm通過後の衝突圧力は222MPaとなり,18mm通過後の圧力は33MPaとなった.この2点から求まる圧力減衰率は距離の2.2乗となった.この結果を同速度で衝突させた氷の圧力計測データと比較するとほぼ一致することがわかった.岩石含有率が12.5wt%程度では圧力の発生と伝播に関して氷との有意な差は現れないことがわかった。
|