研究概要 |
DNA試料、およびメラニン試料に対する秒速7kmまでの衝撃実験および振動実験を行った。DNAはいλDNAおよびプラスミドDNAを用い、およそ5.4-5.6×10^<-3>μg/μlの濃度で、マイナス50℃の凍結状態および常温溶液状態において実験を行った。溶液状態のDNA試料に関しては、加速度試験装置(EMIC製F-600BM)により、10Hz-3G,100Hz-10G,40G,70G,および1kHz-30Gの基盤振動範囲で振動加速度によるDNA鎖の保存性を調べた。解析手段はDNAについては電気泳動法による鎖長分布を、またメラニンについては、主として含有されるメラニンラジカルの残存量を電子スピン共鳴法で調べた。 衝撃実験に用いた2種類の試料カプセルのうち、低温脆性対策として作成した大型のものでは、秒速7km(飛翔体:0.9gポリカ弾)の場合で、DNA鎖長が48kbpから数100塩基対までに分断され、回収時に2本鎖DNAとして残存する量が50%程度となった。大型カプセル内の試料層における平均圧力は1GPa以下に減衰している可能性が考えられたため、標準的な小型のカプセルで実験を行って比較を行った。メラニン試料は小型のカプセル内に作成した1mm以下の薄い圧粉試料層をターゲットとして、常温で衝撃実験を行ったが、炭化せずメラニンをとして残存する部分は秒速7kmで50%,秒速4kmで80%となり、凍結DNA試料の場合と同様の結果を与えた。溶液状態のDNAは剪断力に弱く、破壊されることが知られているが、その程度を見積もるために、振動試験機に溶液状態のDNAとアルミナボールを混在させ、時間とともに変化するDNA鎖長を調べた。この場合、衝撃実験後のDNA試料と異なって、短時間の内に鎖長の不均一性は観測できなくなった。
|