研究課題
プラズマは、電子、イオンの荷電粒子の他に、種々の反応性を有する多量のラジカルから構成される。イオンやラジカルは、ドライエッチングやプラズマCVD等のプラズマプロセスで周知の様に、様々な化合物と相互作用を行い、表面改質や未知の反応過程を経て新たな物質を創製できる。従って、これらの粒子は、様々な化合物で構成されている生体との反応により、生体に対して有機的な役割を果たす可能性が期待できる。生体とプラズマを相互作用させるためには、大気圧かつ室温のプラズマを生成しなければならない。本研究では、新医療福祉機器を目指した大気圧室温プラズマの生成を実現させることを目的とする。具体的には、比較的ガス温度が低いバリア放電方式を採用し、下部電極構造をメッシュ電極にすることで低温大気圧プラズマを実現した。更に、低融点材料(PET、PP)の表面処理を行った。平成16年度に構築したメッシュ電極を用いた大気圧室温プラズマを用いて、PETフィルム等へのプラズマ照射実験を行った。その照射後の表面状態評価として、撥水性や膜質の分析を水接触角計やFTIR分析計により評価を行った。プラズマ照射実験では、導入ガス、混合ガスの種類、ガス流量、照射時間などを変化させて、PP(手書きOHPシート)やPETフィルム(複写用OHPシート)の表面状態変化を調べた。その結果、PPフィルムに対しては、プラズマ照射後に、撥水性の向上が観測された。その撥水性は、照射時間のみに依存し、ガスの種類や流量には依存しないことがわかった。一方、PETフィルムでは、PPフィルムと同じ条件範囲では、撥水性はほとんど変化しなかった。PPの融点は、PETのそれに比べて低い。このことから、本研究で開発した大気圧室温プラズマは低融点材料の表面改質に適していることが明らかとなった。この成果により、今後、プラズマと生体との相互作用へ展開が期待できる。
すべて 2006 2005
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B : Beam Interactions with Materials and Atoms Vol.242
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