本研究では、電子エネルギー分析器の大きさを、大気中での電子の平均自由行程程度まで小さくすることで、大気中で電子の速度選別が可能な電子エネルギー分析器を開発し、大気中での光電子分光を実現することを目的として研究を進めている。 本年度は、以下の2点に関して研究を進めた。 (1)電子分光の前段階として、大気圧下で全電子放出量を微少電流計を用いて測定する測定手法の開発をこれまで進めてきているが、さらにその改良をすすめ、4-9eVの広い範囲のイオン化ポテンシャルを、大気、窒素雰囲気、真空雰囲気で測定できるシステムを実現した。また、界面に関する情報もあわせて得られることなども明らかにしてきた。この手法は、最終的に常圧下電子分光を実現するためのノウハウを蓄積する上でも重要である。 (2)本研究で作成する電子エネルギー分析装置は、各電極をマイクロメーター以下の相対距離で配置する必要がある。その作成のためには、Siのリソグラフィーや異方性エッチングを駆使した微細加工技術を用いることが必要である。これまでに、目的とした構造を作成するための各プロセスの条件出しを行い、基本構造を作成できるところまで来た。これから、実際の分析器の作成を進めていく予定である。
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