研究概要 |
sp混成炭素ラジカルは、sp^2混成炭素ラジカルより約20kcal/mol不安定であり、sp^3混成炭素ラジカルより約32kcal/molも不安定と予想される(燃焼熱からの計算値)。本研究の目的は、今日まで殆ど研究されていない超活性なsp混成炭素ラジカルの発生、化学的特性、及びその有機合成化学的利用に関して研究を展開することにある。本年度は、sp混成炭素ラジカルの発生法として、ヨードアルキンを基質とし、第14族試剤による還元的手法[Bu_3SnH法、(Me_3Si)_3SiH法]、及び金属による還元的手法(Sml_2、In、Zn等の金属を用いた1電子還元手法等)を検討した。その結果、Bu_3SnH法では対応するアルキン還元体を40%程度生成するものの、(Me_3Si)_3SiH法では殆どが還元的付加体であるビニルシランを生成し、Sml_2、In、Zn等の金属による還元的手法ではアルキンへの還元体を定量的に生成することが分かった。現在、これらの反応機構を検討しているが、Sml_2、In、Zn金属による還元的手法では殆どが2電子還元をともなったアセチリドアニオンを経て、還元体を生成ことが分かってきた。一方、Bu_3SnH法ではフリーの高反応性sp混成炭素ラジカルの生成をともなって反応していることが分かってきた。次年度は、酸化的手法(電解酸化法、Na_2S_2O_8/AgNO_3法)及びBarton脱炭酸反応等によるsp混成炭素ラジカル活性種の発生と、TEMPO(2,2,6,6-tetramethylpiperidinyl oxy radical)によるsp混成炭素ラジカル種の捕捉、同位体(重水素)による捕捉、及び計算化学的評価により、sp混成炭素ラジカルのエネルギー状態、電子密度等を計算する予定である。
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