研究課題
我々は、今までに知られていない硫黄を中心原子とするポルフィリンの合成に取り組んでいたが、その検討の一環として、環周辺の立体障害のために骨格が歪んでいるオクタエチルテトラフェニルポルフィリンのジリチオ化体(OETPPLi2)とSOC12の反応を行った。電通大岩崎・橋爪先生による単離した生成物の詳細なX線構造解析の結果、N-Hを持たない酸化されたOETPP骨格を有することがわかった。この錯体の骨格が原系のOETPPH2と比較してもさらにひずんでいること、また、この錯体の骨格の結合長には明らかな結合交替が観測されたことからも、この化合物は反芳香族性と考えられる16π電子骨格を有するポルフィリンの酸化体であると同定できた。我々の知る限り、この種のポルフィリンは今までに単離されたことはなかった。この化合物は、骨格の歪みが存在するために原系の芳香族性が少し失われているため、酸化されやすくなっていると考えているが、CH2C12によるCH-□相互作用によっても少し安定化されていると考えられるX線解析の結果であった。しかし溶液中ではかなり不安定で、CH2C12溶液中でも,数時間で約半分程度が分解することが分かった。また,この錯体のUV-Visスペクトルは異常なまでの短波長での吸収が見られた。OETPP化合物は通常ソーレ帯を450nm付近に、Q帯を550-700nm付近に持つが、この化合物のソーレ体は339nmでQ帯は見られなかった8)。現在、さらに、オクタエチルテトラフェニルポルフィリンよりも、外周のアルキル置換基を大きくした新規化合物、オクタイソブチルテトラフェニルポルフィリン、の合成を行っている。さらに原系の骨格の歪みが増加して16π電子骨格が安定化することを期待している。
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