研究概要 |
キラリティー識別能を有するホスト型光学活性環状リン酸ジエステルとして、3,3'-位に9-アントリル基、および9-アントリルエチニル基を有する光学活性1,1'-ビ-2-ナフトール(BINOL)のリン酸ジエステル二種の大量合成を行った。このうちアントリルエチニル基を有するリン酸が、α位に不斉炭素を有するカルボン酸に対して極めて有効なNMRシフト試薬として機能することを新たに見出した。本化合物はDL-バリンのエナンチオ選択的抽出に有効であることを既に見出している。一方、アントリル基を有するリン酸は、キラルなアルコール、アミン、アミノ酸、およびスルホキシドのエナンチオマーをNMRを用いて高効率で識別することも見出しており、これにより、この二つの化合物が、極めて基質一般性の高いシフト試薬となることが明らかとなった。これらは安定でありNMRピークのブロードニングも起こさないため、今後、広く実用に供されるであろう。展開研究として、その3,3'-位に種々の芳香族アミングループを有する光学活性BINOLのリン酸ジエステルを7種類も新たに合成した。これらは分子内に芳香族アミノ基とリン酸残基を有しており、基質であるDL-アミノカルボン酸との間で強酸・強塩基/弱酸・弱塩基の2点型相互作用が期待される。残念ながらNMRのシフト試薬としての有効性は確認できなかったが、DL-フェニルアラニンのエナンチオ選択的抽出に有効であることがわかった。また、その有効性をESI-MSにより予測できることも明らかとなった。さらに、アントリルエチニル基を有するリン酸を用いてDL-バリンの輸送実験を行った結果、一方のエナンチオマーが選択的に輸送されることが明らかになった。
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