研究概要 |
3次元型フェリ磁性体[Mn(en)]_3[Cr(CN)_6]_2・4H_2O(en=ethylenediamine)の磁気挙動への圧力効果を検討した。磁気測定用クランプセル及びダイアモンドアンビルセルを用いて加圧すると、磁気相転移温度(Tc)はP=4.0GPaまでは直線的に増加して、69K(0GPa)から136K(4.5GPa)まで到達した。.その後、7.0GPa以上の加圧では、T_cは現象に転じた。飽和磁化の値も、P=7.0GPaの領域で減少し、P=20GPaでは磁化は消滅した。圧力下での粉末X線回折測定より、P=3.0GPaまでの加圧でb及びc軸の長さが約4%短くなり体積が約9%減少することを確認した。また、P>3.0GPaの領域で結晶性の劣化が始まり、P>4.5GPaでアモルファス化が進行した。P=4.5GPaまでの加圧では、その挙動に再現性があったが、それ以上加圧したサンプルは初期の結晶状態の磁性を再現しなかった。以上の結果より、0≦P≦4.5GPaの領域では、Cr-CN-Mnの結合長が短くなり磁気軌道の重なりが増加した結果、反強磁性的相互作用が強まりT_cが上昇したと解釈できる。更なる加圧では、アモルファス化に伴い不可逆な構造変化が生じ、相互作用の分断によりT_cが低下したものと考えられる。 一方、二次元型強磁性体[Ni(dmen)_2]_2[Fe(CN)_6]X・nH_2O(dmen=1,1-dimethylethylenediamine)では、0.8GPaの加圧により強磁性体からメタ磁性体への可逆的な変換を観測した。これは、加圧によりシート間距離が短くなり、シート間の反強磁性的相互作用が強まった結果、シート内で整列した磁気モーメントが相殺されたためと考えられる。 以上、構造の次元性を反映した圧力効果を観測し、圧力による可逆的な磁気特性変換に成功した。
|