平成17年度は、平成16年度に引き続いて、四員環の合成化学を開拓する上で鍵化合物である四員環6π電子系シクロブタジエンジアニオンの大量合成法について調査した。ケイ素置換4π電子系シクロブタジエンをアルカリ金属によって二電子還元し、シクロブタジエンジアニオンをジアルカリ金属錯体として高収率で合成した。このうち、ジカリウム錯体ついては、分子構造を単結晶X線構造解析により解明した。対カチオンが異なるシクロブタジエンジアニオンの分子構造について詳細に比較した。四員環6π電子系に由来する芳香族性に関する基礎的知見を得るとともに、シクロブタジエンジアニオンを合成試剤として活用する上での有用な知見を得た。ケイ素基が置換したシクロブタジエンジアニオンと前周期遷移金属の塩化物との反応を検討した。しかし、生成物の単離は困難であり、同定・帰属するには未だ至っていない。今後は、反応条件についてさらに詳細に検討する。 また平成17年度は、四員環の合成化学とは異なるが、シクロブタジエンと同様に新しいポストメタロセン錯体の開発が期待できるフェノキシド単座配位子に関する萌芽的研究を遂行した。オルト位にアダマンチル基を2つ有するフェノキシド配位子を新たに設計・開発し、4族チタン・ジルコニウム錯体と8族鉄錯体を合成した。また、合成した金属錯体の分子構造を明らかにした。非常に嵩高い単座配位子の立体効果について具体的な実験データを得ることに成功し、金属周りの構造学的特徴と金属上での反応性との関連性について調査した。
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