研究概要 |
平成18年度は、四員環6π電子系化合物であるシクロブタジエンジアニオンの合成化学について引き続き研究するとともに、含ケイ素五員環化合物であるシロール(シラシクロペンタジエン)のジアニオン種に関する研究を行った。1,1-ジメチル-2,5-ジフェニルシロールを1,2-ジメトキシエタン中、金属リチウムと反応させることにより、対応するシロールジアニオンジリチウム錯体を赤色結晶として合成・単離することに成功した。結晶構造では2つのリチウムカチオンがシロール環の上下に位置しており、しかもケイ素とリチウムとの距離は大変短い。リチウムはシロール環とη5型に近い配位構造であることを明らかにした。また、リチウムNMRの研究から、ケイ素-炭素(メチル基)結合のσ*軌道を経由した6π電子系環電流の存在が示唆された。シロールは電子受容性が高く、低いLUMOを有している。LUMOの軌道に2電子充填されたシロールジアニオンでは、6π電子系σ*芳香属性が発現することを見いだした。 また平成18年度は、平成17年度に引き続き、嵩高いアリールオキシド配位子を有する前周期遷移金属錯体の萌芽的研究を行った。オルト位にアダマンチル基を2つ有するアリールオキシド配位子を用いて、4族ジルコニウム錯体に関する研究を行った。ジクロロ錯体の還元反応では、2つのジルコニウム金属がベンゼン環を挟んだ逆サンドイッチ型構造の2核錯体が生成することを見いだした。分子構造を解明するとともに小分子との反応性について調査した。
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