研究代表者は次世代を担う触媒的な窒素固定法の開発を最終目的として研究を行っている。この研究の一環として、光応答性部位であるポルフィリンに着目し、ポルフィリンを補助配位子とする窒素錯体の合成と反応性に関する検討を着想するに至った。即ち、ポルフィリン配位子によって捕集された光エネルギーを中心金属に移動させて、配位窒素分子の還元反応に必要なエネルギーに変換することができれば、触媒的な窒素固定が達成可能であると期待される。本研究では、ポルフィリン部位を有する配位子として遷移金属がポルフィリンの近傍に二座で配位することが可能な配位子を設計し、この配位子を有する遷移金属錯体の合成を行い、さらには、この新規な遷移金属錯体に窒素分子を配位させて、対応する窒素錯体の合成を行い、これらの錯体の反応性を詳細に検討し、窒素固定反応を行うことが最終目標である。 前年度に得た知見に基づき、超分子窒素錯体の光などの外部環境や外部刺激に対する応答能を検討し、窒素固定反応の触媒化を詳細に検討した。また、昨年度までに合成に成功しているポルフィリン部位を有する配位子を種々の触媒活性を示すロジウム、イリジウム、ルテニウムなどの後周期遷移金属の補助配位子として用いて対応する錯体の合成に成功した。さらに、合成に成功した錯体を用いた様々な新しい反応性の検討を行った。特に光に代表される外部刺激に対する応答能を詳細に検討した。ケトン・イミン類のヒドロシリル化や水素移動型反応による還元反応を取り上げて検討を行ったが、期待された光応答性は観測されなかった。また、ポルフィリンの中心金属を代表的な亜鉛から、ニッケルやコバルトなどの遷移金属へと変えた新規配位子の合成に成功した。
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