研究概要 |
二重結合と水酸基を兼備するアリルアルコール誘導体であるシンナミルアルコール(1)を超臨界水(380℃,10min,水密度0.35g/mL)で処理すると38%の転化率で,単純な酸化生成物であるシンナムアルデヒド(2,<1%),二重結合が移動した4-フェニルプロピオンアルデヒド(3,7%),二重結合と水酸基の位置が入れ代わったα-ビニルベンジルアルコール(4,11%),化合物4の二重結合が移動したプロピオフェノン(5,2%)を得た.この反応のメカニズムを明らかにする目的で,反応に及ぼす温度,時間,水密度の効果を精査した.その結果,この反応は350℃を過ぎたあたりから加速度的に反応が進行したことから,活性化エネルギーの高い反応であると言える.また,この反応は水密度に敏感で,水が存在しないときには単純な酸化性生物である化合物2と分解生物であると考えられるアリルベンゼンおよびスチレンが得られ,化合物3〜5が全く得られないことを明らかにした.しかし水が存在すると分解反応が抑えられ,逆に化合物3〜5の収率が向上することを見出した.以上の事実から出発物質1から生成物3〜5にいたる反応過程に水分子を含む環状遷移状態を経ることが推測された. 以上のように,二重結合と水酸基を兼備するシンナミルアルコールを亜臨界水あるいは超臨界水で処理すると,二重結合あるいは水酸基が移動した各種生成物を与えることを明らかにした.
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