研究概要 |
リビングアニオン重合に官能基変換と繰り返し反応を組み合わせた新しい合成法により、7世代にわたる構造が厳密に制御されたデンドリマー様多分岐高分子の合成に成功した。構成ポリマーセグメントは、508本に及び鎖末端は512個を有し、分子量200万に達する巨大分子である。さらに、各世代の分岐数を2から4に増やすことで、枝密度が急激に増大する多分岐ポリマーの精密合成と機能性の付与を考えたPerfluoroalkyl(Rf)セグメントとオリゴエチレングリコール単位を有する親水性セグメントの導入を試みた。 まず枝密度の急激な増大を目的として、4官能性の開始剤を新たに開発し、上記合成法に適用した。その結果、3世代までは容易に合成が出来、構成セグメント、84本、鎖末端数、256個、分子量、100万の多分岐ポリマーの精密合成に成功した。現在、第4世代のポリマー合成を行っているが、最外層の枝密度が高くなり、一部欠陥が現れており最適条件を検討中である。次にRfセグメントの各層への導入を行い、第3世代、第4世代のいずれにおいても、各層への導入が出来ることを証明した。Rf基やセグメントは低い表面自由エネルギーを有していることより、フィルムの表面に濃縮する傾向があり、疎水性かつ疎油性の表面特性を示すことが知られている。本研究で精密合成した多分岐ポリマーは、特殊な分岐構造とナノオーダの球状構造を有しているため、そのフィルムの表面特性に大きな興味が持たれ、現在様々な評価を行っている。また親水性セグメントを導入した多分岐ポリマーは選択溶媒中で様々な形態のミセルを形成することを見出し、分岐構造、導入位置とミセル形態やサイズの関係を系統的に調べている。以上のように、機能導入も可能となったことより、構造と機能発現の関係、さらに異相構造に基づくナノ超構造形成と自己組織化と集合体について、TEM、F-TEM, SEM, AFM観察を用いて観察し、それらの形態制御を計画している。
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