星型に連結したヒト血清アルブミン多量体(アルブミンクラスター)にヘム誘導体を包接させたユニークな構造の合成ヘム蛋白質(アルブミン・ヘム複合体)を創製し、この水溶液が生理的膠質浸透圧を超えることなく、血液の2〜3倍量の酸素を輸送できる人工酸素運搬体となることを実証する。 初年度は、計画に沿った展開を実施し、予想通りの成果を得ることができた。(1)核となるアルブミン表面に架橋剤を介して複数分子のアルブミンを共有結合し、構造明確なアルブミンクラスターを合成、その分子量、物理化学的特徴を解明した。(2)また、アルブミン1ユニット当たり8分子のヘム誘導体を包接、計32個の活性中心を持つアルブミン-ヘム複合体を構築し、酸素配位平衡の解析から酸素輸送ヘム蛋白質としての能力をヘモグロビンと比較した。 (1)アルブミン多量体の合成と構造解析 アルブミンの表面リシン残基に、片末端スクシンイミド基・片末端マレイミド基を有する架橋剤を反応させ、コアアルブミンを合成、これに還元型アルブミンを混合し、構造明確なアルブミンクラスター(3、4量体)を得た。HPLC、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、各成分を分取・単離。CDスペクトル、ゲル電気泳動から二次構造(α-ヘリックス含量)や等電点がアルブミン単量体と変わらないことを実証。TEMによりる形態観察も実施した。 (2)アルブミン-ヘムクラスターの酸素結合能 得られたアルブミンクラスターに近位塩基を共有結合した合成ヘムを包接させ、アルブミン-ヘム複合体を調製。酸素結合定数(酸素親和度)、酸素結合解離速度定数の測定から、酸素輸送ヘム蛋白質としての機能を評価した。
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