研究課題
大環状構造をもつホスト分子がゲストを取り込む際に、自発的に開環してゲストと相互作用し、続く自発的閉環によってその認識過程を完結する動的分子認識の新モードを実現させることを目的に、前年度に合成したメタロホストのゲスト認識能について核磁気共鳴スペクトルを用いて詳細に検討した。用いたメタロホストは、ビピリジンと(チオ)尿素部位をもつポダンドと銅(I)とからほぼ定量的に得られる。こうして得られるメタロホストである擬環状化合物はハロゲン化物イオンを捕捉することを初年度に明らかにしているが、今回、末端にフェニル基をもつリン酸ジエステルをその空孔に強く取り込むことがわかった。また単純なフェニル基の代わりに、フェニル基の3,5位に大きな置換基であるt-Bu基をもつリン酸ジエステルをゲストに用いても同様の検討を行った。このゲストはCPKモデルを用いた考察により、メタロホストの空孔を通り抜けることができないにもかかわらず、メタロホストに強く取り込まれることがNMR滴定より明らかとなった。NOEの測定からもホストとゲストのシグナルの間に相関が見られ、ゲストがホスト空孔にロタキサン型で取り込まれていることが明らかとなった。さらに分子力場計算からもこの認識様式がエネルギー的に有利であることがわかった。これらの結果は、メタロホストの銅錯体部位が置換活性であるため、認識場となる空孔が開閉することができ、非常に大きな置換基を末端にもつゲストであっても、被認識部位がメタロホスト空孔に丁度よいサイズであれば有効な分子認識が可能であることを示している。つまり、本研究課題の当初の目的であった自発的な認識場の開閉による動的分子認識モードを実現することに成功した。この手法は生体巨大分子の認識にも適用可能であるなど、波及効果の大きな成果であると考えている。
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