光誘起J会合体形成を利用する高密度記録材料に関する研究を行った。 両親媒性スピロピランはLangmuir膜、LB膜中で光誘起J会合体形成を示す。これまでLangmuir膜、LB膜作製時に温度を一定に保つ条件で検討を行ってきたが、この条件ではJ会合体は核の周りに分子が数μm程度拡散して成長するため、J会合体形成とともに膜の形態が大きく変化した。高密度記録を達成するためには、膜形態変化を伴わないJ会合体形成条件を見出す必要があるので、Langmuir膜を一定表面圧に保持し熱処理を行った。 下相水温度13℃で両親媒性スピロピランを表面圧10mN/mまで圧縮したLangmuir膜に紫外光照射を行うとメロシアニンへの異性化のみが進行した。ところが、この膜を形成してから下相水温度を30℃まで昇温した後に紫外光照射を行うとメロシアニンのJ会合体が形成した。ブルースター角顕微鏡を用いてこのJ会合体形成過程を検討したところ、光照射前は均一なLangmuir膜であり、J会合体形成の進行に伴う膜形態変化のないことがわかった。そこでこのLangmuir膜を固体基板上に一層転写し、フォトマスクを通して紫外光照射を行ったところ、5μmの幅のラインの書き込みが可能であることがわかった。
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