(1)テンプレートを利用し、J会合体を用いた高密度記録材料に関する研究を行った。 混合LB膜中の相分離構造を利用してテンプレート作製を行った。両親媒性シランカップリング剤と通常の両親媒性分子の相分離混合LB膜の構造は、分子種の選択、混合比、LB膜作製条件の検討等により、制御が可能である。分子間相互作用の制御によりドメインサイズをナノメートルオーダーまで小さくすることができた。このナノ相分離構造を持つLB膜に加熱処理を行うと、シランカップリング剤は基板と共有結合を形成し、さらに溶媒処理を行うことにより、基板上から通常の両親媒性分子のみを選択的に除去することができた。残されたテンプレートはナノサイズの親水性部分(この部分は基板表面が露出している)とそれを取り囲む疎水性単分子膜という構造をとるので、表面特性の違いを利用して、親水性部分に選択的に色素分子を導入することができた。AFM測定により導入された色素分子層はナノメートルオーダーの膜厚を持っていることが分かった。さらに吸収スペクトル、発光スペクトル測定により、色素がJ会合体を形成していることが分かった。 (2)有機超薄膜中での光誘起J会合体形成を利用する高密度材料に関する研究を行った。 両親媒性スピロピランの純粋LB膜の作製は下相水温度が30℃でのみ可能であり、光誘起J会合体の形成条件の検討には困難な部分がある。そこで両親媒性スピロピランと長鎖脂肪酸の混合LB膜について検討したところ、この膜は種々の下相水温度において作製可能であることが分かった。この膜に室温で紫外光照射を行ったところ、低音で作製したLB膜ではメロシアニンへの異性化のみが進行し、J会合体形成は起こらなかった。
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