研究概要 |
天然型一酸化窒素還元酵素のpHを通常のpHである8よりも低下させ,変成する直前の弱酸性状態(pH5.2)に設定したところ,4つある鉄中心のうち,NOの反応部位である高スピンヘムbと非ヘム鉄を架橋していると考えられる,オキソグループがプロトン化するかもしくは脱離し,架橋構造が崩れることがわかった。この状態にNOを作用させるとヘムbと非ヘム鉄にそれぞれNOが可逆的に結合した。これまで,Fe(II)状態でなければNOが結合しないと予想されていたが,Fe(III)にNOが結合することが判明した。末端酸化酵素の場合には完全還元状態にならないとNOは結合しないので,先祖酵素である一酸化窒素還元酵素と末端酸化酵素のこのような機能の相違は,FeとCuという使用元素の相違とNOとO_2という基質の性質の相違によることが判明した。この事実は,投稿準備中である。一方,一酸化窒素還元酵素の発現系構築は極めて難航しており,活性部位を含む大サブユニットの単独異種発現は今だ成功していない。所定のヘム等を含む成分を得ることはできたが,発現が成功したのかどうか確認できていない。これは,大サブユニットがほとんど膜に埋もれているため,抗体を作成できないことが原因の一つである。一方,先に異種発現に成功している小サブユニットは結晶構造解析を試みるところまでこぎ着けており,小さな結晶が得られるに至っている。さらに,2つのサブユニットがコンプレックスとなった組換え体については,少量ながら大腸菌での発現に成功し,その成果を日本農芸化学会において発表する予定である。キメラ酵素の発現については発現プラスミドを作成したところであり,形質転換を試みている。
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