当初、シリコーンオイルを分散媒としたものが有望であろうと考えていたが、どうも粉体との分散系になると流体粘度が大きくなりすぎ、流動特性に劣ることがわかってきた。そこで、水やアルコール類を中心とした混合溶媒系での誘電泳動特性を測定し、分散媒と粉体との間のベストチョイスを探索している。今のところ、平均粒径5μmのNucleosil SB2を用い、分散媒としてエタノールあるいはエタノール50%+水50%を用いた場合には、10kHzから200kHzの範囲で強い引力モードが得られることがわかり、これを中心として検討を進めていきたい。 電極系のパターンのほうは、位相差給電を可能とするリード取り出し方法が幾何学的に難しく、そのために、微細電極パターンをフォトリソグラフィーの技術を駆使して作成するにあたっても、歩留まりが極度に悪いということがわかりつつある。歩留まりに関しては、単純に製造技術の問題といえるのかもしれないので今後も検討を続けていくが、先に誘電泳動特性自体を利用した方法を検討することにした。これは、上記の誘電泳動特性のうち、複素誘電率の周波数依存性を利用するもので、誘電率の虚数側のピーク値のところでは粒子の回転が主運動となることを利用し、引力による固定、回転、斥力による移動を周波数スキャンすることでうまく利用し、流体に運動力を与えようとするものである。こちらのほうが電子回路上の対応のみとなるので、先にこちらでの検討を中心とし、電極パターンと位相差給電による方法は、電極製造技術の向上を待って実施する。 本技術に関して、NTTアドバンステクノロジー(株)及び(有)イハラ理研との間で協力関係を築きつつある。
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