研究概要 |
当初、シリコーンオイルを分散媒としたものが有望であろうと考えていたが、どうも粉体との分散系になると流体粘度が大きくなりすぎ、流動特性に劣るため、水やアルコール類を中心とした混合溶媒系でのベストチョイスを探索し、平均粒径5μmのNucleosil SB2を用い、分散媒としてエタノールあるいはエタノール50%+水50%を用いた場合には、10kHzから200kHzの範囲で強い引力モードが得られることがわかった。しかしながら、誘電泳動による粒子の固定はうまくいくのだが、流体としての流動特性を誘発するにはうまくいかなかった。その原因が粉体の誘電泳動特性ばかりでなく、溶媒系の電気泳動による流動、すなわち電気・機械系分野での呼称が電磁流体特性(Electrohydrodynamic, EHD)が関係していることが分かってきた。 そこで、溶媒自体の電気泳動による流体特性を明らかにするため、セバシン酸ジブチル(デカン二酸ジブチル)を誘電体駆動流体とするEHD特性の評価を実施した。しかしながら、データのばらつきがあまりにも大きすぎ、学術的な議論を展開する以前のものであった。悪戦苦闘している中で、データのばらつきが天候に関係していそうだということが分かり、特に湿度の影響を大きく受けている状況であったので、有機溶媒中の微量水分がばらつきの原因ではないかと疑われた。そこで、現有するドライルームを用いて測定系を全てドライルーム内に設置し、乾燥した有機溶媒に微量水分を添加するという方法でEHD特性の評価を行ったところ、データのばらつきは小さくなり、セバシンノ酸ジブチルへの0ppm〜2000ppmの水分添加によりEHD特性が大きく変化し、2100ppmではブレークダウンすることを見出した。誘電率の小さな有機溶媒系に誘電率の大きな水不純物が微量でも混入することでEHD特性が大きく変化することがわかり、本系の難しさを改めて思い知らされた。 本技術に関して、NTTアドバンステクノロジー(株)及び(有)イハラ理研との間で協力関係を築きつつある。
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