ポリエステルはカルボニル基による禁制遷移のため、発光機能の付与やデバイス応用の研究は皆無であった。マロン酸エステル化合物はプロトンドナーとアクセプターの役割が可能な酸性メチレンとカルボニル基の両方を分子内に有するため、励起状態での分子内プロトン移動(ESIPT)を起こす。そこで酸性メチレンを含有する脂肪族ネットワークポリエステルフィルムを作製し、精密な熱反応性プロセッシングにより、青色発光機能の付与と微細構造の簡便形成を実現した。(第53回高分子学会年会討論会/第13回高分子材料フォーラムにて発表) 1.脂肪族ネットワークポリエステルフィルムの作製:ペンタエリトリトールと2当量のジエチルマロン酸エステルをバルク重合させ、無色透明のオイル性ガム状のプレポリマーを得た。さらに、溶媒キャスト後、150℃でポスト重合させ無色透明かつ柔軟な自立膜を作製した。 2.青色発光機能の付与:作製したポリマー自立膜を空気中240℃、4時間加熱すると、300〜450nmの吸収帯が著しく増大し、無色透明から淡黄色へ変化した。加熱によりポリマーマトリックス中の活性メチレン部位とカルボニル基が自己縮合型クネフェナゲル反応し、新たな共役構造が形成した。さらに加熱処理膜は325nm以上の波長励起で非常に強い緑青蛍光(極大波長450nm)を示し、ポリマーマトリックス中に形成された共役構造からのESIPT現象が放射機構として起こった。 3.微細構造の簡便形成;プレポリマーのキャスト後、フィルムを240℃でポスト重合すると直径数10-100μmのシリンダー状のピンホールがフィルム中に形成され、エッジ部分から強い蛍光を発した。ポリマーマトリックス(n=1.5@400nm)と周辺の空気(n=1.0)からなるシリンダー状の面発光共振器構造形成によるもので、今後プラスチックレーザーへ応用できる。
|