研究概要 |
本研究では、共役ポリラジカルの凝集に誘引される主鎖の共平面化によるクロミズムについて、磁場配向によってこの凝集を制御することでマグネトクロミズムを実現することを目的としている。この目的を達成するために、以下の手順で実施している。「新規なポリ(9,10-アントリレンエチニレン)型共役ポリラジカルを合成し、ソルバトクロミズムおよびサーモクロミズムを示す条件について整理する。」「上記の知見を基礎として、共役ポリラジカルがマグネトクロミズムを示す条件を探索する。」本年度は、オリゴ(9,10-アントリレンエチニレン)型ポリラジカル前駆体について合成し、そのクロミズム現象について整理した。 1.単分散のオリゴ(9,10-アントリレンエチニレン)誘導体の合成 側鎖にフェノール残基、末端に長鎖アルキルおよびヒドロキシメチル基を有する1、2量体オリゴマーを合成し、リサイクル分取GPCを用い、大量かつ単分散のオリゴマーを精製した。 2.ポリ(9,10-アントリレンエチニレン)誘導体単分子の電子構造の解析 1で合成したオリゴマーについてソルバトクロミズム現象を観測した。クロロホルム中でオリゴ(アントリレンエチニレン)構造のπ共役系に帰属される吸収(λ_<max>=496nm)を示した。クロロホルムに対し他の溶媒中(メタノール,THF,ヘキサンなど)では,新たに530nm付近に吸収の肩が出現した。貧溶媒中では,部分的な凝集による共平面化が促進されたためと考えられ,二量体ですら大きな分子間相互作用を有することが明らかとなった。また,水素結合可能なヒドロキシメチル基を有する誘導体では,ヘキサン中でこの傾向がより顕著であった。
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