研究概要 |
本研究では、共役ポリラジカルの凝集に誘引される主鎖の共平面化によるクロミズムについて、磁場配向によってこの凝集を制御することでマグネトクロミズムを実現することを目的としている。この目的を達成するために、以下の手順で実施した。「新規なポリ(9,10-アントリレンエチニレン)型共役ポリラジカルを合成し、ソルバトクロミズムおよびサーモクロミズムを示す条件について整理する。」「上記の知見を基礎として、共役ポリラジカルがマグネトクロミズムを示す条件を探索する。」本年度は、オリゴ(9,10-アントリレンエチニレン)型ポリラジカル前駆体について合成を最適化し、そのクロミズム現象について詳細に検討した。 1.オリゴ(9,10-アントリレンエチニレン)誘導体の合成と反応条件の最適化 側鎖にフェノール残基を有する9-(3-ヒドロキシ-3-メチルブチニル)-10-ブロモアントラセン誘導体をPd(PPh_3)_4触媒存在下重合させた。リサイクル分取GPCを用いオリゴマーを分取して、触媒サイクル中で塩基が消費されることから、脱保護試薬でもあるKOHの添加量により、重縮合反応の理論モデルに従って分子量が制御できることを明らかにした。 2.オリゴ(9,10-アントリレンエチニレン)誘導体の電子構造と立体構造の相関 1で合成したオリゴマーについてソルバトクロミズム現象だけでなく、サーモクロミズム現象も観測した。クロロホルム中の二量体では昇温と共に共平面化により共役系の拡がった吸収(λ_<max>=520nm)が増大し、λ_<max>=488nmの吸収が減少した。一方、ヘプタン中ではスペクトルが先鋭化し、降温と共にλ_<max>=520nmの吸収が増大し、λ_<max>=488nmの吸収が減少した。クロロホルム中では、アントラセン間の共平面的な構造と捻れた構造の交換が速く、捻れた構造が基底状態であり、ヘプタン中では、共平面的な構造と捻れた構造の交換が遅く、共平面的な構造が基底状態であることが示唆された。トルエン中の紫外可視スペクトルからは、これらの中間的な構造が推測されたが、得られたポリラジカルのジアントリルアセチレン構造を介した磁気的相互作用はJ=34cm^<-1>と比較的大きな値となった。
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