これまでLi_5TiN_3はN_2もしくはNH_3雰囲気下で合成されてきた。またLi_5TiN_3がLi-Ti-N3元系における唯一の安定相とされてきた。本研究ではLi_3N-TiNライン上でのLi/Ti比や、雰囲気、温度といった合成条件を変化させた場合の相関係を明らかにすべく検討を行った。Ar雰囲気下800℃での焼成により、幅広い固溶域を有するとみられる新規逆蛍石構造化合物が得られた。更に、X線吸収分光測定と構造解析からLi_5TiN_3の16cサイトのTiをLiが置換し、同時にN空孔が導入された相であり、一般式はLi_<5+x>Ti_<1-x>N_<3-x>と考察された。新規逆蛍石構造化合物に対して水素圧0.1MPa、室温〜500℃という水素化条件において、明らかな重量増加はみられず、また、X線回折測定から水素化後も逆蛍石構造が維持されており、分解反応も生じなかった。期待した水素貯蔵反応は、逆蛍石構造の分解による水素化反応、あるいはTiの触媒機能により解離された水素の構造中に存在する空の6配位位置への導入であるが、上記のマイルドな水素化条件ではこれらの反応は起きていないと考えられる。一般に水素貯蔵特性は、<500℃、<10MPaの温度・圧力条件下で検証される。従ってより高い水素圧下で反応性が見出される可能性は高いと考えており、今後展開していく予定である。
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