窒化リチウム(Li_3N)は、水素吸蔵材料として6.5wt.%と高い水素貯蔵能を持つことが報告されている。一方、水素圧0.3MPaで、水素放出温度が200℃、水素吸蔵温度が250℃と、水素吸蔵放出反応に必要とされている圧力・温度がともに高いこと、また水素放出の過程でアンモニアが放出され、その反応の可逆性が低下することが問題とされている。 これらの問題を解決するため、アンモニア放出の抑制、水素放出温度の低下効果を持つ、これまでに報告されている触媒機能を有する遷移金属をLi_3Nに固溶させた。これは、水素化による分解反応で金属の高分散、微粒子化により通常の外部担持よりも高い触媒活性が得られるのではないかと期待したためである。 本研究では固溶させる金属として、これまでに触媒機能を有すると報告されているTiとCoを使用した。Tiでは、出発材料をxLi_3N-(100-x)TiN(x=65〜97.5mol%)として、Ar雰囲気下800℃で合成し、新規結晶相Li_5+xTi_<1-x>N_<3-x>を見出した。Coでは、出発材料を(3-x)/3Li_3N・xCo(x=0.01〜0.4)として、N_2雰囲気下700℃で合成し、Li3Nと同様の層状構造を有する化合物であるLi_<3-x>Co_xNが得られた。 合成した試料について、水素圧0.1MPa以下、500℃までの水素化条件では、Li-Ti-N化合物は水素と反応しなかった。一方Li-Co-N化合物は、320℃付近から水素化による重量増加が確認された。Li_3Nは200℃付近から水素化による重量増加が確認されていることから、Li_3NにCoやTiを固溶させることにより構造が水素に対して安定化していると考察した。さらに、構造による水素に対する反応性の違いを明らかにした。 Li-Co-N化合物について、水素化分解後に得られたCo金属の粒径を、SEM測定により観察したところ、合成前では500nm程度であったのに対し、水素化後では20nm程度の一次粒子が確認された。このことから、Li_3Nに金属を固溶させ、水素化による分解反応によって金属微粒子を析出させることに成功した。さらに、微粒子化による脱水素時のアンモニア放出の抑制も確認した。
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