研究概要 |
現在、光ファイーバー通信には波長分割多重伝送と光増幅ファイバーが導入されており、一本の光ファイバーの中を32種類以上の波長の異なるレーザーが伝送されている。このようなシステムの中で最も重要な問題の1つは伝送レーザー自身の加熱による光波制御デバイスの温度上昇である。温度上昇によって、デバイスは通常正の熱膨張と正の屈折率変化を示すことになり、その結果レーザー光の光路差が変化する。レーザー光の光路差の変化はデバイス機能(信号の分解能)の低下を意味するので、温度変化によっても光路差が変化しないアサーマル性を示す光波制御材料が必須である。本研究は、アサーマル性と光非線形性/強誘電性(光波制御に必須の機能)を同時に満たす透明な結晶化ガラスを開発することを目的とし、特にP_2O_5系およびB_2O_3系ガラスに焦点を当てた。研究によって得られた結果を以下に示す。 1.アサーマル性の出現をガラスの電子分極状態から検討した結果、大きな電子分極を示す陽イオンを含むリン酸塩ガラスにおいて大きな可能性があることを推論した。 2.Nb_2O_5を比較的多量に含むP_2O_5系ガラスを検討した結果、30K_2O.10Nb_2O_5.60P_2O_5(KNPガラス)及び10K_2O.30BaO.30Nb_2O_5.30P_2O_5(KBNPガラス)組成において安定なバルク状ガラスが得られることを見出した。KNPガラスの結晶化温度はT_xは548℃,KBNPガラスはT_x=793℃であった。これらのガラスの結晶相は、KNPガラスではKNbOP_2O_7であり、KBNPガラスではBa_3Nb_5O_<15>であった。残念ながら、これらのガラス結晶化試料からは第二高調波発生(二次の光非線形性)は観測されなかった。 3.15K_2O.15Sm_2O_3.70P_2O_5組成のガラスを開発し、結晶化により第二高調波発生を示すKSm(PO_3)_4結晶が生成することを見出した。さらに、このガラスにNd:YAGレーザー(波長:1064nm)を照射することによりガラス表面にKSm(PO_3)_4結晶ラインを書き込むことに成功した。 4.B_2O_3を含むGd_2O_3-Bi_2O_3-B_2O_3系ガラスにおいて第二高調波発生を示す透明な表面結晶化ガラスを開発した。 5.BaO-Al_2O_3-B_2O_3系ガラスを通常の溶融法で作製し、密度、屈折率、結晶化挙動を明らかにした。 特に、低熱膨張を示すBaAl_2B_2O_7結晶相の生成をX線回折、第二高調波強度の測定により確認した。
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