研究課題
酸と塩基からなる超分子液晶を作成し、重合によりナノチューブ構造を作成することが本研究の目的である。昨年度、酸としてトリアルコキシ安息香酸、塩基としてトリ(2-アミノエチル)アミンを用い、3:1の円盤状イオン性超分子化合物を合成した。アルキル基として、炭素数1から16の直鎖状のものを導入し、その熱挙動を偏光顕微鏡にて調査したところ、炭素数5以上の超分子は、すべて柱状液晶相を示した。本年度は、すべての液晶化合物について、示差走査熱量計(DSC)により、転移熱の測定を行い、さらに、詳細なX線回折測定により、超構造の解析を行った。熱分析からは、奇数のアルキル鎖を有する超分子が、偶数のアルキル鎖を有する超分子よりも、液晶から等方液体に変化する温度(清澄点)が高くなることが判明した。3:1の円盤状イオン性超分子において、アルキル鎖末端の方向がその液晶相の安定性に関係しているものと考えられる。最も液晶温度幅が大きかったものは、アルキル鎖がC12H25のもので、コア分子であるトリ(2-アミノエチル)アミンと周囲のトリアルコキシ安息香酸のバランスが良いものと思われる。粉末X線回折においては、六方柱状相に基づいたd100、d110、d200が観測された。アルキル鎖の炭素数5-8では密度が一定であるが、炭素数9以上では密度が減少することが判明した。分子モデルより、炭素数9以上では周囲のアルキル鎖同士がアルコキシ安息香酸の間でぶつかるため、密度が低下するものと考えられる。このように、これらの超構造について、詳細な情報が得られた。今後は、この超分子液晶状態を高分子化することを試み、ナノチューブ作成を達成したい。
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