本年度は、次の2問題について実験を進めた。 1)カーボンナノチューブ(CNT)に金属メッキを施したものと高分子の複合材料を開発しその物性評価をおこなった。しかしこの実験は本年度も成功しなかったが、昨年度よりも改善できたので、論文としては報告可能である。しかし、実用化には至らないレベルであった。 そこで、高分子のなかで最も弾性率と強度が高いといわれるPBO繊維についての銅及び金メッキをおこなった。銅については完全な成功であるが、金についても同様な成功が確認された。極めて金色に輝く耐熱性のある、ステンレスよりも硬く強度がある繊維であるが、細いので、屈曲するが、塑性変形せずに元に回復する価値ある繊維である。産業的にも価値があり、学術論文として、掲載が可能である。2)ポリビニルアルコール(PVA)溶液中にカーボンファイバー(CF)を凝集しないように100℃で分散させ、これを5cmX5cmの容器に移して2枚の永久磁石で作り出された磁場内(磁場は溶液を上下に貫通)に入れて、CNTを磁場方向に配向させ、磁場内の温度を常温にしてゲル化させて膜面に垂直にCNTを配向させる。この様相を溶液の濃度を変えて観察し、溶液粘度とCFの配向度との関連において解析した。その結果、世界に先駆けて、フイルム面にSFが垂直に配列した試料が作成できた。また、X線回折実験により、世界に先駆けて、CFの配向を分布関数の形で求めるための数学的記述も提唱できた本年度、学術雑誌に掲載していく。
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