研究概要 |
1.ナノサイズ強磁性トンネル接合素子の作製 イオンエッチング装置,電子ビームリソグラフィーおよび集束イオンビーム加工装置(いずれも現有)を用いて素子の微小化を図った.集束イオンビームを用いた場合,最小で200x400nm^2のトンネル接合の作製に成功した.また,電子線リソグラフィを用いた場合,200x200nm^2のドット作製に成功した. 2.トンネル接合の構造解析 スピンの注入効率を左右する接合界面の構造解析を行った,超高真空スバッタ装置により作製した素子の界面状態を調べるために,非弾性電子トンネル分光を用いて測定した.測定の際に流す電流の方向を変化させることで,トンネル接合の両界面における非弾性散乱を分離して調べることができる.この結果,接合界面の格子のミスマッチの大きさが大きい界面において,非弾性スピン散乱が上昇し,磁気抵抗比のバイアス依存性の劣化を招いていることを明らかにした. 3.強磁性電極からのスピン波伝搬 強磁性体(FeNi)/非磁性体(Cu,Ru,Pt),および,FeNi/Cu/Pt積層膜の強磁性共鳴スペクトルを測定し,共鳴線幅より緩和時間およびスピン拡散長を見積もった.スピンカレントは強磁性の才差運動によって,非磁性体中に拡散(スピンポンピング)する.Cu内におけるスピン拡散長は室温で約350nm,液体ヘリウム温度で約1000nmであることがわかった.また,スピン拡散長の温度依存性は,非磁性体内でスピンがフォノンにより散乱されるモデルで定性的に説明できた.
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