現在、広く実用化されている太陽電池では、エネルギー変換機構として光起電力効果が用いられている。一般に知られている光起電力効果では、禁制帯幅よりもエネルギーの大きなフォトンが一つ吸収されると、一対の電子・正孔が生成される。したがって、禁制帯幅以下のフォトンは透過してしまい、エネルギー変換には寄与しない。本研究では、禁制帯幅以下のエネルギーをもつフォトンを二つ吸収して、電子・正孔対を生成する2光子吸収過程を、微結晶3C-SiCを対象に実験的に検証することを目的として研究を行っている。本提案では、申請者により世界で初めて実現された、低温形成微結晶3C-SiCに深い準位となる不純物を添加し、2光子吸収過程を実証する。この技術開発は、現在のシリコン太陽電池のエネルギー変換効率の限界をうち破るものとなり、理論限界が大幅に向上する。 開発初年度にあたる平成16年度は、微結晶3C-SiCへの不純物添加技術、ならびにギャップ内準位からの吸収を確認するための測定手法の検討を行った。まず、原料ガスにメチルシランと水素を用いたホットワイヤー法により、300℃前後の低温で禁制帯幅2.2eVの微結晶3C-SiCを形成することに成功した。電気的特性を測定した結果、最適化された条件では、膜が高抵抗化することが分かった。現在、この膜にBならびにAlを添加することを試みており、ドーピング技術そのものはほぼ確立された。 2光子吸収を評価するには、Constant Photocurrent法によりギャップ内準位密度を測定することが必要である。ところが現在、フィラメント材料に用いているReが膜中に残留するため、キャリアライフタイムが短く測定が難しい状況となっている。そこで、Re残留量の低減化を初め、膜質、の向上を図っている。この課題がクリアーされ次第、本格的にギャップ内準位を測定し、2光子吸収に関する検証を行う。
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