現在、広く実用化されている太陽電池では、エネルギー変換機構として光起電力効果が用いられている。一般に知られている光起電力効果では、禁制帯幅よりもエネルギーの大きなフォトンが一つ吸収されると、一対の電子・正孔が生成される。したがって、禁制帯幅以下のフォトンは透過してしまい、エネルギー変換には寄与しない。本研究では、禁制帯幅以下のエネルギーをもつフォトンを二つ吸収して、電子・正孔対を生成する2光子吸収過程を、微結晶3C-SiCを対象に実験的に検証することを目的として研究を行っている。本提案では、申請者により世界で初めて実現された、低温形成微結晶3C-SiCを用いて2光子吸収過程を実証する。この技術開発は、現在のシリコン太陽電池のエネルギー変換効率の限界をうち破るものとなり、理論限界が大幅に向上する。 平成17年度は、微結晶3C-SiCへの不純物添加技術、ならびにギャップ内準位からの吸収を確認するための測定手法を確立した。まず、原料ガスにメチルシランと水素を用いたホットワイヤー法により、300℃前後の低温で禁制帯幅2.2eVの微結晶3C-SiCを形成することに成功した。電気的特性を測定した結果、最適化された条件では、膜が高抵抗化することが分かった。そこで、次に、この膜にAlを添加した。2光子吸収評価は、Constant Photocurrent法によるギャップ内準位密度測定により行った。これにより、Alが形成する準位からと思われるサブギャップ吸収を観測したが、キャリアライフタイムが短く、光吸収層としての開発には時間が要することが分かった。 そこで、つぎに不純物添加を伴わない手法で、二光子吸収を起こさせる可能性のある手法として、SiC中にSiの微結晶(ナノ結晶)を生成させ、量子準位を用いて光吸収を起こさせる手法の開発に着手した。ラマン散乱による測定では、ナノ結晶の形成が確認されている。この手法は、製膜後の熱処理によりナノ粒子が析出する現象を利用しているが、高品質化という点で期待される材料系であることが分かった。
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