研究概要 |
摩擦係数,摩擦力,凝着力などの物理量を精度良く測定することが困難であり,定性的な可視化手段にとどまっていた従来摩擦力顕微鏡に対して,本研究では,マイクロマシン技術を用いて作製する新しいプローブを提案し,摩擦力顕微鏡を定量測定可能な手段に発展させることを目的としている.開発するプローブでは,水平方向に働く摩擦力を平行板バネのたわみで測定し,鉛直方向の力を平行板バネ支持部を支えるヒンジ部のねじれによって独立に測定する.従来のカンチレバーのねじれで測定するものと異なり,水平力・鉛直力を独立に同時測定可能な構造としている.平行板バネに要求される主な仕様は,微小な摩擦力が測定可能な柔らかいバネであること(水平方向バネ定数10N/m以下),鉛直力による連成をさけるために鉛直方向には剛性が高いこと(垂直方向バネ定数1000N/m以上),振動外乱にロバストであるため十分高い共振周波数を有すること(10kHz以上)であり,以上の要請を満たすために,平行板バネ部として幅200μm,板厚5μmという高アスペクト比(40:1)の微小構造体の作製が要求される.プローブ作製で最も大きな困難が予想される点は,この高アスペクト比加工である.本研究では,結晶異方性を利用した化学エッチングを用いて作製を試みた.シリコン基板(面方位(100))の結晶の方向とマスクパターンを工夫することにより,平行板バネ面に特定の結晶面(110面)が露出するように設定し,高アスペクト比な板バネを試作した.板幅約200μm,板厚約70μmの平行板バネ構造の作製に成功したが,化学エッチングによる表面荒れが大きくこれ以上の高アスペクト比が困難であることが分かった.今後は平行板バネ面に特定の結晶面(100面)が露出する作製法を試みる.
|