キャリア寿命の短い光伝導アンテナへのフェムト秒レーザーパルスの照射によって、従来よりも効率的で高出力のテラヘルツ光源が開発され、各種の非破壊計測や短距離通信などの分野への応用が期待されている。本研究では、フォトニック結晶中のQ値の大きな局在電磁モードを利用することにより、光伝導アンテナから発生するテラヘルツ光の狭帯域化を目指す。本年度は、フォトニック結晶に加えて、最近になってQ値の高い電磁モードが発見されたフォトニックフラクタルについて、FDTD(時間領域差分)法による解析を行い、モードの周波数、電場分布、Q値、透過、反射、および、散乱スペクトルを算出した。その結果、90°散乱スペクトルのピーク周波数が電磁モードの周波数と大変良く一致すること、ならびに、入射光の偏光と角度を変えることによって散乱に寄与する電磁モードを選択できることが判明した。この知見に基づいて、大阪大学接合科学研究所宮本研究室で作製されたフォトニックフラクタルの特性を解析しているところである。他方、低温エピタキシャル成長させたGaAs薄膜に間隔5ミクロンの電極を取り付けた光伝導アンテナに、パルス幅150フェムト秒の近赤外レーザーパルスを照射して、テラヘルツ光の発生を確認した。さらに、テラヘルツ光の検出に用いる光伝導アンテナのアレイを作製して、ガルバノミラーでレーザーパルスを順次照射し、テラヘルツ光の空間分布の測定を試みているところである。
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