通常、光伝導アンテナはテラヘルツ電磁波パルスに対してサンプリング検出器として動作し、電磁波の振幅時間波形を検出する。しかし、イメージング応用などでは波形すなわちスペクトル情報は必要でなく、波形を時間積分した強度情報のみがあればよいという場合も多い。また、波形検出にはポンプレーザーパルスとプローブレーザーパルス間の光学遅延を走査する必要があるため、ボローメーター検出器などを用いた強度メージングよりも時間がかかる。もし整流効果を利用したテラヘルツ電磁波パルスに対する積分強度検出器が利用できれば光学遅延を走査する必要がなくなるため、テラヘルツイメージングの高速化と簡便化につながる。 本研究課題の目的は、半導体-金属電極間のショットキー接合の整流特性を利用し、光伝導ショットキーアンテナによるテラヘルツ電磁波パルスの積分強度検出を実証、実現することである。 研究者は電極の一方をN i: Ge : Au合金で、もう一方の電極をAlで製作した光伝導アンテナをGaAs基板上に作製した。Ni : Ge : Au合金電極はオーミック電極、Al電極はショットキー電極として動作することが期待できる。素子の直流電圧-電流特性を測定すると、暗電流及び光照射時の光伝導電流(直流)は確かに整流特性を示した。すなわち、逆バイアス方向では電流が順バイアス方向と比較して流れにくい(抵抗が大きい)ことが確認できた。次に標準的な光伝導アンテナをフェムト秒レーザーで励起することで発生させたテラヘルツ電磁波パルスをショットキー接合を持つ光伝導素子で検出することを試みた。発生側の光伝導アンテナのバイアス極性を反転させることで発生する電磁波の極性を反転させ、素子のテラヘルツ電磁波に対する整流応答を調べた。その結果、最大で30%程度の整流効果(順バイアスと逆バイアス時のピーク信号の違い)を確認することができた。
|