(1)コーン状のBNマイクロエミッター(又はナノエミッター)の分布がフラクタル的になる条件が見出され、そのフラクタル次元が高い精度で求められた。条件により、1.63なる大きな値のフラクタル次元を持つ分布が形成された。これは、「紫外パルスレーザーによる表面反応励起を併用したプラズマCVD」という本プロセス自体の非線形性・大きな非平衡性のもたらした結果である。今後、非線形物理の考え方を強く意識した成長機構の解明を進める。 (2)電界電子放出特性のエミッター形状への依存性が見出され、剣山状のエミッターを作製した場合、電子放出閾値が1V/μm以下で、0.9A/cm^2(以上)という高い電流密度が達成されることが分かった。 (3)本物質を電子源に用い、ディスプレイ用の蛍光体を発光させることで、発光デバイスの試作に成功した。 (4)BNマイクロエミッターの断面TEM写真により、エミッター内部に中心軸に沿って結晶の粗大化した「通路」が形成されていることが判明した。それぞれのエミッター内部にこの「電気伝導性が良好と思われる」ナノチャンネルが形成されていることが優れた電子放出特性を生むと現在考えられるため、AFM-電気特性測定を用いた直接的な実証を計画している。 (5)薄膜面に垂直な方向におけるマクロな電気伝導性がオーミックであることが実証された。どのようなメカニズムで電気伝導性が出ているかを調べることが今後の課題である。 (6)電子放出特性を促進するもう一つの因子として、負性電子親和力(NEA)がある。NEAは水素による表面吸着層(+)と下地原子(一)の形成する電気双極子モーメントが電子放出のポテンシャル障壁を引き下げる効果によると考えられているため、ダイヤモンドと本物質(sp3-結合性5H-BN)を分子軌道法により、比較した結果、ダイヤに比べて1.44倍の電気双極子モーメントが見出され、優秀な特性の原因の一つと考えられた。
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