研究概要 |
(1)ArFエキシマレーザ(193nm,20Hz)を用いたプラズマ支援レーザCVDによりsp3-結合性5H-BNミクロコーン・エミッターが成長する。基板温度に依存して、ミクロコーンがフラクタル分布・均一分布遷移を示すことも見出され、そのメカニズムも周期的光化学反応・拡散反応モデルにより解釈された。モデル方程式からエミッター分布の境界条件依存性が予測されたため、Si(100)基板表面をダイシング処理により各1mm×1mmの碁盤目状の領域に分割し、成長パターンの基板温度依存性を調べた。ダイシング無しの状態では、フラクタル分布が得られる条件であるが、今回、「ミクロコーン・エミッター分布の自己組織的な規則化」が生じ始めていることが見出された。これは、理論予測による「選択則」に一致した。 (2)大気中電界電子放出現象が見出され、その機構を調べる目的で、表面水素吸着層による電気的双極子モーメントの絶対値を分子軌道法により求めた。この値から、仕事関数の低下を理論的に予測した結果、バンドギャップの値5.5eVに対して、4.3eVの低下という大きな効果があることが示唆された。これにより、大気中電子電界放出現象が可能になる機構として、sp3-結合性5H-BNの表面窒素原子と表面吸着水素間の大きな電気的双極子モーメントによる仕事関数の実質的な低下が示唆された。 (3)コーン分布のフラクタル・均一分布等を再現する光反応・拡散モデルを提示し、この予測が実験結果を説明することが分かって来たが、特に、境界条件がモルフォロジーパターンに影響することがこのモデルによって示唆されているため、その影響を調べる目的で、ダイシング処理したシリコン基板上でのパターンを調べ始めた。その結果、理論予測に一致して、極めて大きな影響が、基板上の規則的境界条件によりもたらされることが明らかになり始めた。
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