研究概要 |
火力発電,原子力発電等の高温プラントおよび航空機エンジン用ガスタービンなどの過酷な環境下で使用される材料は,高効率稼動にともなう使用環境の激化から,クリープ損傷や酸化脆化などの度合いも激しくなり,その老朽化が人命を左右する大事故に発展する可能性をはらんだ重要かつ早期解決が望まれる問題である.本研究では,巨視的な破壊を向かえる前の微視的な破壊初期段階で,積極的に損傷を除去し,材料の再生・治癒(rejuvenation)を行うことを目指し,最近,金属学的現象にさまざまな影響を与えることが明らかとなってきた「磁場作用」を利用した熱処理により,高温変形損傷を受けた多結晶材料の機能・性能を回復させる方法を確立することを目的としている. 本年度は,高温変形損傷の主要な要素である粒界キャビティーに着目し,磁場中熱処理による粒界キャビティー損傷の治癒,材料特性の回復・再生が可能か否か検討した.有効な磁場の効果を期待して,磁気モーメントの強いFe-Co合金を用いた.高温変形により粒界キャビティーを導入したFe-2.9at%〜9.0at%Coの4種類の,Fe-Co合金を強磁性α相,常磁性α相および常磁性γ相温度領域にて磁場強度H=0,3,6Tの磁場作用下で損傷回復熱処理を行った.損傷回復率を定量的に評価した結果,強磁性α相温度域における磁場中熱処理によって,印加磁場強度の増加とともに,損傷回復率が大きくなることが見出された.特に,キュリー温度(T_c)直下のT/T_c=0.9〜1.0の温度域における磁場中熱処理により最も効果的な損傷回復が起こることが明らかとなった. 外部磁場作用によるキャビティー収縮の促進機構のモデリングを行った結果,キャビティーの収縮はキャビティー半径が小さいほど促進され,外部磁場が高いほどキャビティー収縮が促進されることを確認した.
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