研究課題
本研究では、すべてのナノテクノロジー研究の基盤になるにもかかわらず、これまで全く手がつけられてこなかったナノ構造体変形の実験手法を世界に先駆けて開発し、原子スケール材料力学研究の分野を工学の1分野として開拓することを試みた。原子世界の変形を、その場で観て、操り、測る材料力学実験を展開し、ナノテクノロジー研究を指導的な立場で進める基礎を確立する研究を進めた。これまでに、高分解能透過電子顕微鏡法を基盤として、ナノ構造体を機械的に、その場で観察しながら原子スケールで変形し、その際の力を光てこ方式で検出できる装置を、現有装置を基にして、新たに初年度に設計・製作した。本年度は、これらを用いて、実際にナノ構造体変形の実験を行った。(1)金属、半導体、セラミックス等のナノ構造体、具体的には、ナノメートル接点、ナノメートル細線、原子接点・ワイヤー、量子ドット等を個別に変形させ、その原子過程を観察するとともに、応力-歪み曲線を同時に測定した。(2)特に、シリコンのナノメートルワイヤー、カーボンナノチューブなどを変形体として選定し、そのサイズが数nm、1nm、数原子、1原子と減少していくにつれ、応力-歪み曲線がどのように変化していくか、すなわち、強度と弾性率のサイズ依存性を調べた。その結果、原子サイズ材料力学の特徴となる曲線の不連続性は、大きさが数十原子程度の時に出現することがわかった。シリコンのナノワイヤーの強度はバルクの4-5倍、マイクロワイヤーのそれの2倍以上に増加した.弾性限界はバルクの100倍以上になり、著しいサイズ効果が観測された。(3)こうした力学挙動の他、構造、電気伝導、電子状態についても実験し、これら特異な性質のの起源を考察した。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
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