研究概要 |
初年度は,生物の分岐網形態を三次元的な空間や物体の各所へエネルギー・物質を均一に輸送,収集する機能システムと捉えて,また樹木や根の分岐網形態については,自然荷重に耐える構造と物質集配機能の複合システムと捉えてその最適性について統一的な説明,解釈を試み,分岐網形態力学を構築することを目的として実施し,以下の成果を得た. 1)分岐網の力学構築と形態創成シミュレーション法の確立:植物根系,血管分岐網の定量的観察データをもとに,分岐網形態形成のための力学モデルとその最適性評価法を構築した.多目的最適化問題として統一的な定式化を試み,分岐網成長の各過程で複数の目的に応じて,根元から出発し,仮定した分岐則と成長則に従って三次元的な影響領域の成長,拡大を考慮しながら分岐と成長を繰り返し,物質・エネルギー集配機能を最大化する分岐網を成長させる分岐網形態創成シミュレーション手法を確立した. 2)植物分岐網の成長シミュレーション:確立した分岐網の力学モデル,分岐網形態創成シミュレーション手法を,樹木の分岐網の成長シミュレーション,根子の分岐網成長シミュレーションに適用して,得られる分岐網形態と分岐則や成長則などの各種パラメータ,栄養分などの環境因子との関係,形態形成に重要なパラメータと目的関数の達成度の関係,目的関数の違いによる成長形態の相違などを詳細に検討した.さらに分岐網を創成する領域が非対象に制限された場合や,太陽光,養水分の供給度合いなど外界環境からの作用因子の影響度に空間的な分布あるいは偏りがある場合の成長シミュレーションも実施して,最適性評価法の妥当性を確認した。
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