研究概要 |
平成16年度は,超純水中でシリカ微粒子を低出力のCW-Arレーザ光を用いてトラップし,シリコン基板表面を走査することによって数nmから数十nmの加工痕が得られる現象の詳細な観察からその基本特性を明らかにし,さらに加工プロセスの解明を目的とした新たな観測用基礎実験装置の構築および基礎実験を行い,以下の研究成果を得た. 1.赤外YAGレーザ(波長1064nm)を利用した赤外エバネセント光学系を構築し,それをこれまでに研究代表者らが構築した共振レーザアブレーション加工実験光学系に組込むための基礎実験として,SOIウェハのシリコン薄膜層内を伝搬する赤外YAGレーザ光によって表面に形成される赤外エバネセント場を光ファイバプローブで検出する実験を行った.本実験によって,SOIウェハのシリコン薄膜層内のナノ微小欠陥によるエバネセント場散乱光の高感度検出が可能となった.また,シリコンウェハ表面のナノメートルオーダの加工痕をエバネセント場散乱光によって検出できる可能性があることを示した. 2.CW-Arレーザ(波長488nm)で捕捉したシリカ微粒子を制御できる加工実験装置を用いて,レーザ出力,加工表面の初期状態,粒径(粒径3〜8μm)などをパラメータとしたシリコン基板表面の加工実験を行った.さらにナノメートルオーダの加工痕を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定評価した.本実験によって,表面凹凸部に選択的にエネルギーを作用させることが可能であることを明らかにし,さらに熱的ダメージの自律的回避によって損傷を与えることなくナノメートルオーダの平滑加工が行えることを確認した. 3.有限差分時間領域法(FDTD法)に基づく電磁場解析によって,Arレーザで捕捉したシリカ微粒子の底部に強い光エネルギの集中が起きていることを明らかにし,微粒子のレンズ効果によって2次レーザ収束場が形成されることを確認した.
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