研究概要 |
本研究は,軟質材の形状コンフォーミティーと摩擦面の撥油性による流体の固体壁面滑りの促進効果を利用して,流体潤滑における摩擦係数を飛躍的に低下させる可能性と,その適用範囲を明らかにすることを目的としている.本年度は,実験装置の製作,表面方法の作成,及びガラス面を用いた予備実験を行った.実験装置の製作では,既存のEHL膜蛍光観察装置に高解像度・低暗電源のデジタルCCDカメラを組み込むとともに,トラクション測定と温度制御が行えるように装置主要部の設計変更を行った.組み込んだCCDカメラにより,光干渉法と蛍光法による定常流体潤滑膜の膜厚測定と負圧領域でのキャビティー観察が可能となった.表面の作成では,ガラス円筒試験片の曲面に,単純な浸漬による吸着膜の付与,及びラングミュア・ブロジェット法による吸着膜付与を行った.また,炭素系材料とゴムを含む有機高分子材料への吸着膜付与方法について検討した.ポリαオレフィンとポリαオレフィンにステアリン酸を0.05質量%添加したものを潤滑剤として,ガラス円筒試験片とガラス円板試験片間の線接触純滑りEHL実験を行い,面圧20MPa程度,滑り速度150〜250mm/sのもとで,ステアリン酸を添加した場合にポリαオレフィン単体の場合よりも摩擦係数が若干低下することを確認した.また,ヘキサデカンとヘキサデカノールを用いた場合にも同様の傾向が認められた.一方,移動面側に撥油性表面膜を付与した場合には,潤滑部に流体が導入されず潤滑膜が形成されないことを確認した.
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