研究概要 |
集束超音波の焦点といった局所で音響流が制御できれば,ミクロ流としての応用が期待できる。これまでも音響流の応用例はいくつか報告されているが,1つあるいは2つの音源を駆動して流体の攪拌などに用いたものがほとんどである。本報告は集束音源の放射面を2つに分割して独立に振幅と位相を調整して超音波を放射することにより,発生する音響流の空間分布の制御を実験で試み,理論でその実現を裏付けたものである。この目的のために,いままでの経験から,実験がしやすい3〜5MHzの集束超音波を利用して,まずは流れ場の基礎実験を行った。試作した超音波エミッタは同軸に配置されたディスク型およびリング型の超音波素子からなり,各素子に加える電気信号の振幅と位相を調整することで,特に焦点付近の音場が自在に変えられるよう設計されている。超音波エミッタの開口径は40mm,曲率半径は60mmである。これを水中に設定し,ハイドロホンを用いた音場の計測,扁平回転楕円座標を用いた音波ビームのモデル式SBE(Spheroidal Beam Equation)との比較と理論の妥当性,得られた音場をもとにして発生する音響流の流速分布を理論予測した。この予測値と比較するため,レーザ・ドップラ流速計で流速特性を計測した。この結果,焦点付近の流れを加速あるいは逆に減速することが入力信号の位相調整で容易に可能であることが分かった。また,理論によってそのことが裏付けられた。
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