研究概要 |
本研究では,高シュミット数物質の乱流拡散場の微小スケール(粘性拡散小領域(viscous diffusive subrange)と呼ばれる統計的普遍平衡領域)での統計的特性を実験的に明らかにすることを目的とする.この目的を達成するには,少なくとも数μmの空間分解能を有する濃度計の開発が必要である.本年度は主に,濃度計の開発および実験装置の製作を行い,測定系の精度の検証を行った. 今回新規に開発・購入した計測システムは光ファイバ型LIFマイクロ計測システム〔(株)三弘製;製品名 定点蛍光光強度時間分析測定装置〕である.当初の計画では,光源として半導体レーザー(波長488nm)を使用し,レーザー光を光ファイバで伝送した後,可動式照射光学系によって数μm以下のスケールの検査部に絞り込み,そこで発せられた蛍光を別の可動式測定用集光光学系によってとらえ,再び光ファイバにて伝送した後フォトマルによって検出する予定であったが,開発費用の不足により,今回は受光側光ファイバシステムおよびフォトマル検出系のみ導入し,数μm以下のスケールの検査部からの蛍光の検出装置の開発を目指した.なお,本実験室には既存のアルゴンレーザーLDVシステムがあり,このLDVと今回開発した定点蛍光光強度分析装置を併用することにより,濃度・速度同時測定が可能となる. 現在,半導体レーザービーム(あるいはアルゴンレーザーを使用)を直接水路に入射し,乱流噴流拡散場の1定点からの蛍光を受光側の集光光学系によってとらえ,信号のSN比,変動濃度確率密度関数分布,変動濃度スペクトル分布など基本的統計量の測定を行っている.今後,この新LIF計測システムとLDVによる乱流噴流の濃度・速度同時測定を行う予定である.なお,乱流微細構造と拡散場の関係を数値計算によっても調べ,微小スケール拡散場の構造を考察した.
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